石川県グローバルニッチトップの技術力と知財戦略:BBS金明(石川県白山市)

目次

株式会社BBS金明:世界シェア約80%のグローバルニッチトップ

株式会社BBS金明は、石川県白山市に本社を置く、半導体製造装置、クリーンエネルギー関連装置、および工作機械の開発・製造・販売を行う産業機械メーカーです。特に、特定の分野で世界トップクラスのシェアを持つ、高度な技術力を誇るグローバルニッチトップ企業として知られています。

1. 世界シェアトップのニッチトップ企業

BBS金明の最大の強みは、半導体の基盤材料であるシリコンウェハの製造工程で使用される「シリコンウェハのエッジ研磨装置」です。

  • ニッチトップシェア: この分野で世界シェア約80%〜90%を占めており(推定)、2014年には経済産業省の「グローバルニッチトップ企業100選」に選定されています。
  • 技術的な重要性: ウェハの端面(エッジ)を高精度に研磨することで、ウェハ全体の構造安定性が高まり、半導体の微細化・薄型化に対応しつつ、端面ぎりぎりまでチップ化することが可能となり、歩留まりの向上に直結しています。
2. 三本柱の事業構成

事業は、次の3つの柱で構成されており、特定の業界に依存しない安定性を目指しています。

  • 半導体関連装置: シリコンウェハ研磨装置が主力。
  • クリーンエネルギー関連装置: 太陽電池用シリコンインゴット加工装置など。
  • 工作機械・産業機械関連装置: トランスファーマシン、インデックスマシンなど、自動車部品等に対応するオーダーメイドの専用機を開発・製造しています。
3. 一貫生産体制とオーダーメイド対応

開発、設計、部品加工、組立、販売、アフターサービスまでをすべて社内で行う一貫生産体制を持っています。

  • この社内一貫体制により、迅速な対応高品質の維持を実現しています。
  • 顧客の複雑な要望に応える「ユーザーメイド(オーダーメイド)」の装置開発を得意としています。
4. 企業規模と社風

従業員数は100名程度(非上場)であり、高い技術力を持ちながらも中小企業の機動性を活かした経営を行っています。

  • 顧客ファースト: 顧客からの緊急依頼には迅速に対応する機動力や、長年の取引先との信頼関係を重視する「顧客ファースト」の姿勢が強みです。
  • 働きやすい環境: 従業員のワークライフバランスや健康経営にも積極的に取り組み、福利厚生の充実やアットホームな社風も特徴として挙げられています。

BBS金明の主力製品:ウェハのエッジポリッシング装置

世界シェア80%を誇っている主力製品である「エッジポリッシング装置」とはどのような装置なのでしょうか?

ウェハのエッジポリッシング装置(Edge Polishing System または Edge Grinding and Polishing Machine)は、半導体製造の基盤となるシリコンウェハの周縁部(エッジ)を、極めて高精度に研磨(ポリッシング)する専用の装置です。これは、ウェハ全体を平坦に研磨するプロセスとは異なり、ウェハの端面とその近傍の曲面部分に特化した加工を行う装置で、半導体メーカーの歩留まりと製品品質に直結する非常に重要な役割を担っています。

1.装置の役割と重要性

ウェハのエッジポリッシングの主な目的は、以下のとおりです。

項目説明EV・半導体への貢献
クラック・欠陥の除去ウェハを大口径(例:300 mm)に加工する際に生じる**微細な割れやチッピング(欠け)**を物理的に除去します。ウェハの破損防止に直結し、製造ラインでのダウンタイムを防ぎます。
パーティクル(異物)の発生抑制ウェハのエッジ部にある加工痕や微細な凹凸は、その後の製造工程でチリやホコリ(パーティクル)の原因となります。これらを滑らかに研磨することで、異物発生を抑制します。回路のショートや歩留まり低下を防ぎ、製品の品質安定に不可欠です。
構造の安定化と利用可能領域の拡大エッジ形状を高精度に整えることで、ウェハの構造が安定し、ウェハの端面ギリギリまで回路を形成できる利用可能領域(チップ化領域)が拡大します。ウェハ1枚あたりのチップ採取量(歩留まり)を向上させ、製造コスト削減に貢献します。

2. エッジポリッシングの主要技術とプロセス

装置は、シリコンウェハを固定し、特定の研磨剤と研磨パッドを用いてエッジ部分のみを精密に加工します。

① 研磨方式

エッジポリッシングは、主に以下の複合的なプロセスで行われます。

  • グラインディング(研削): 最初に行われる荒加工で、ダイヤモンド砥石などを用いてエッジの大きな形状を整え、クラック層を除去します。
  • ポリッシング(研磨): 仕上げ工程で、スラリー(研磨剤)と研磨パッド(パッド研磨など)を用いて、グラインディングで残った微細な加工痕や表面のダメージ層を化学的・機械的に除去し、鏡面に近い滑らかさを実現します。
② BBS金明の独自技術(例)

株式会社BBS金明が世界シェアを持つ強みは、このエッジポリッシングにおける独自の技術です。

  • 「パッド研磨」方式: 従来の「テープ研磨」に代わる方式で、より高い品質と歩留まり向上に繋がるブレークスルーとなりました。
  • ウェットプロセス対応: 研磨だけでなく、その後の洗浄・乾燥工程も装置内で完結させることで、チリやホコリの再付着を防ぐクリーンな環境を提供しています。
  • ユーザー対応力: ユーザーの開発計画やテスト状況に応じて仕様を柔軟に調整できるカスタム対応力が、技術優位性を支えています。
③ 研磨対象領域

研磨対象は、ウェハの以下の3つの曲面領域です。

  • トップベベル : ウェハ上面とエッジ面をつなぐ部分。
  • エッジ: ウェハの側面(円周部分)全体。
  • ボトムベベル : ウェハ下面とエッジ面をつなぐ部分。

BBS金明の特許出願

高いシェアを誇るニッチトップの場合、その知財戦略が気になりますね。まずは特許出願から調べてみました。

国内では、これまでに31件出願されていました(ファミリー含むと37件)。31件をグラフにまとめました。グラフにおいて、縦軸は出願年、横軸は技術分野ごとの出願件数です。技術分野は右側に掲載されています。コア技術の出願がほとんどであることが見て取れます。

今見たのは出願した特許の件数ですが、このうち、どれくらいを維持しているのかも見てみると、21件維持していることがわかりました。以下が維持している特許の分析グラフです。

一般的に、製造業・装置メーカーの中小~中堅企業では、出願後に維持される割合は 30~50%程度 に留まることが多いので、特許31件のうち21件維持(約68%)というのはかなり高い水準です。この理由については、同社に実際に聞いてみないとわからないのですが、一般的に以下のような理由が考えられます。

  • 実施性が高い:出願の多くが、実際に装置設計・製造・納入まで直結する(ウエハ研磨装置・CMP装置など)
  • 自社技術の独自性が明確:研磨プロセス・エッジ形状・工具設計・治具構造など、工程特化型の独自ノウハウ
  • 審査対応に積極的:審査請求をきちんと行い、拒絶理由に応答して権利化している可能性が高い
  • 国際展開・顧客防衛の意識:世界シェア8割を背景に、模倣・海外追従を防ぐ意図で権利を維持

維持率68%超は、 「事業直結型出願」「選択と集中」「有効活用」を実践している企業の典型です。出願を「数」で稼ぐより、有効権利を戦略的に維持する知財管理の成熟度が高いと評価できます。特にBBS金明のように、世界的ニッチ市場(ウエハ端面研磨装置)でシェアが高い企業では少数精鋭・長期維持の知財ポートフォリオが合理的です。

BBS金明の強さ

BBS金明の特定分野における世界シェアが高い理由は、主に以下の要因に基づいていると考えられます。

1. 独自の超精密加工技術と特許群
  • 特にシリコンウェーハエッジポリッシング装置(研磨装置)において、CMP技術(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械研磨)**を用いた独自の加工方法で、数多くの特許を取得しています。
  • これにより、他社装置が追従できない圧倒的な「加工速度」と「精度」を実現しており、半導体メーカーの生産性向上に大きく貢献しています。
  • この分野では、世界シェア80%という非常に高いシェアを誇っています。
2. 一貫生産体制(社内一貫体制)
  • 設計・加工・製造・組立に至るまでを自社内で一貫して行う体制を確立しています。
  • この体制により、「スピーディー」「低コスト」「高品質」の価値提供を可能にし、顧客の多様なニーズや市場の変化に柔軟かつ迅速に対応できることが競争優位性となっています。
3. 高い技術力の蓄積と応用
  • 創業以来、半導体関連装置、太陽光関連装置、工作機械の三本柱で事業を展開し、工作機械などで培った高度な技術力を、半導体・太陽光関連装置へ応用しています。
  • 例えば、太陽光関連装置(シリコンインゴットの研磨)でも、業界最速の加工速度や高い製品精度を実現し、世界トップシェア(約20%)を獲得しています。
4. ニッチトップ戦略の成功
  • 半導体製造プロセスの中でも、特に高い技術力が求められる「シリコンウェーハの外周(エッジ)を磨く」という非常に専門的で重要なニッチな分野で、圧倒的な技術的優位性を確立したことが、高い世界シェアに直結しています。

すごく余談ですが、なるほどと思った話があります。BBS金明の社長は元ホストをされていた方で、BBS金明への入社はまったく別の産業への参加だったのですが、最初に、信頼のおける右腕と左腕をしっかり配備して挑んだそうです。これが成功の秘訣だったと、別の会社の社長が言っていました。会社経営において仲間やチームって需要だなと改めて思うとともに、そういう仲間たちがついてくる社長のお人柄もうかがい知れます。

まとめ

石川県内にはすばらしいニッチトップ企業が数多くあります。創業100年を超える企業もあり、いずれも主力製品が高いシェアを誇っています。本記事ではBBS金明の技術と特許について紹介しました。ほかのニッチトップ企業についても順に紹介してまいりたいと思います。

本記事は一部にAIを使用して作成しています。

IPアドバイザリーの代表、宮崎幸奈は、福岡県のソシデア知的財産事務所金沢オフィスの責任者をしています。ソシデア知的財産事務所の小木弁理士は、もともと首都圏の大手特許事務所で活躍していた経験を持ち、そのような高いレベルの品質を地方価格で提供しています。ソシデアは全国で15名のスタッフを擁し、地方の中小企業の特許出願を他分野にわたり多数代理しています。これまでの出願代理件数は、1000件を超えます。ソシデアは、特許出願だけでなく、商標、意匠の出願のほか、知財経営、知財戦略など、事業に密接に関係した知財活動の支援も行っています。中小企業やスタートアップの支援を特に得意としています。ぜひお気軽にご相談ください。

株式会社IPアドバイザリー
石川県野々市市にて特許関連の各種業務を行なっています。販路開拓や知財コンサル、特許翻訳のことなどどうぞお気軽にお問い合せください。
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