石川県のニッチトップを守るために海外向けマーケティングを強化する方法

石川県の産業におけるニッチトップの存在
石川県の産業を考えるとき、やはりニッチトップ企業の存在はとても大きいと思います。石川県の資料では、県内ニッチトップ企業は73社から93社へ増え、そのうちグローバルニッチトップ企業は9社で全国5位とされています。県としても、こうした企業を「独自の技術や製品で国内外の高いシェアを持つ企業」と位置づけています。つまり、ニッチトップ企業は石川県の産業の一部というより、むしろ強みの中心にある存在だと言えます。
実際に数字を見ても、ものづくりの存在感は小さくありません。令和4年度の石川県の県内総生産は4兆7,173億円で、そのうち第2次産業は28.9%、製造業だけでも23.5%を占めています。サービス業の比重が大きいのは確かですが、それでも石川県が外から稼ぐ力を持つうえで、製造業が大事な柱であることは変わらないと思います。
その中でもニッチトップ企業は、単に製造業の一部というより、石川県の製造業の質を代表するような存在です。世界や国内の特定分野で高いシェアを持つ企業が集まっているというのは、やはり大きな財産です。だからこそ、こうした企業が元気であり続けることは、石川県の産業全体にとってかなり重要だと思います。

強い技術の裏にあるニッチトップの苦悩
ただ、技術が強い会社がそのままずっと安泰かというと、現実はそうでもありません。中小企業白書では、製造業では中小企業の価格転嫁力が大企業より低いとされていて、付加価値額の伸びを押し下げていると分析されています。つまり、良い技術や製品を持っていても、その価値を価格に十分反映できなければ、会社としてはだんだん苦しくなってしまいます。ニッチトップ企業は強い技術を持つ反面、取引先が限られやすいことも多いので、この問題を受けやすくなっています。
さらに、人の問題もあります。製造業では、教える人が足りない、次を担う人が育ちにくい、後継者も見つかりにくい、といった課題が重なりやすいです。強い企業ほど、技術や顧客対応が特定の人に集まりやすく、その人が抜けると一気に弱くなることがあります。価格転嫁が難しい、教えられる人が少ない、後を継ぐ人も見つからない。こうしたことが重なると、技術力があっても経営は楽ではありません。
しかも最近は、中小企業の倒産件数そのものも増えています。ここで気をつけたいのは、倒産が「売れない会社」だけの問題ではないということです。技術があって受注もあるのに、利益が薄い、資金繰りが苦しい、人が足りないという理由で疲弊していく会社もあります。つまり、ニッチトップ企業の危機は、技術がないことではなく、商流や資金の流れの中で力を発揮しきれないことにあるのだと思います。
海外向けマーケティングの必要性
では、石川県のニッチトップ企業をどう支えていくべきなのでしょうか。
筆者は、その大きな答えの一つが、海外向けマーケティングをもっと強くすることだと思います。
ここでいう海外向けマーケティングは、単に輸出を増やしましょうという話ではありません。海外企業や、日本に進出してきた外資系企業に対して、石川県のニッチトップ企業が自社の強みを直接伝え、直接比較され、直接引き合いを得られる状態をつくることです。今の国内商流だけに頼っていると、どうしても既存取引先との力関係の中で価格が決まりやすくなります。けれど、新しい市場や新しい顧客を持てれば、技術そのものの価値をより正面から見てもらえる可能性が高まります。
外資系企業からのニッチトップへの注目
近年、日本に進出する外資系企業は着実に増えています。JETROによると、2024年末の日本の対内直接投資残高は 53.3兆円で過去最高となり、2024年のグリーンフィールド投資件数も 223件 と前年より増加しました。特に、通信、半導体、電子部品・電子回路といった分野で投資が目立っており、日本国内で新たな調達先や協業先を探す外資系企業の母数そのものが広がっています。
しかも、外資系企業は日本の大企業だけを相手にしているわけではありません。JETROの2024年度調査では、日本国内で協業している相手として 大企業45.0% に次いで 中小企業42.7% が挙がっており、中小企業はすでに主要な協業先の一つになっています。さらに、協業内容としては研究開発や新製品開発だけでなく、国内市場向けのマーケティング・販路開拓 も含まれています。つまり、外資側にも日本企業、とくに技術力のある中小企業と組んで市場を広げたい需要があります。
外資系企業に対するアピール方法
では、外資系企業はどうやって協業先を見つけているのでしょうか。調査では、協業相手の発掘手段として 国内展示会・イベント参加が68.8%、既存パートナーからの紹介が49.1%、自社ウェブサイト・SNSの活用が21.3% で、自治体等の公的支援は7.9% にとどまりました。製造業でも傾向はほぼ同じです。つまり、外資に見つけてもらうために本当に効いているのは、行政ルートよりも、展示会、紹介、ウェブ、直接営業といった民間主導のマーケティング導線だと言えます。
さらに注目すべきなのは、協業している外資系企業ほど業績が良い傾向があることです。JETROの公表では、日本国内の企業・大学・研究機関等との協業を実施または検討している企業は、そうでない企業よりも増収割合が高く、日本国内のリソース活用が売上高を引き上げる要因になっている可能性が示されています。これは、日本側のニッチトップ企業にとっても、外資との接点づくりが単なる理想論ではなく、実際の商機につながりうることを示すデータです。
このため、ニッチトップ企業が生き残るためには、海外向けマーケティングを「余裕があればやること」と考えるのではなく、経営の中核機能として強化する必要があります。英語で分かる会社資料を整えること、展示会で待つのではなく事前に接触すること、ウェブで供給条件を明確に示すこと、そして日本にいる外資系企業の調達・品質・技術担当者に直接届く導線を持つことが重要です。対日投資の拡大と外資の協業ニーズを考えれば、海外向けマーケティングの強化は、石川県のニッチトップ企業にとって十分に根拠のある打ち手だと言えます。

まとめ
筆者は経営相談を受けることがありますが、そのなかに、外資系企業が日本の中小企業と取引したいという相談や、日本の会社をM&Aしたいという相談があります。昔と違って日本の価値は下がっています。しかしながら、日本の加工技術の質やオペレーション能力は高く評価されており、「メイドインジャパン」は依然として有効です。高品質のものが安価に手に入るのが、いまの日本の現実です。悲しいことではありますが、これをビジネスチャンスととらえるのも、中小企業が生き残るためのひとつの方法かもしれません。
参考サイト
- 「石川県産業成長戦略」の主な取り組み状況(概要)
- 令和4年度 石川県県民経済計算年報
- 2025年版 中小企業白書(HTML版) 第6節 価格転嫁
- 2025年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要
- 2025年版ものづくり白書
- 2024年度 外資系企業ビジネス実態調査
- 倒産集計 2025年報(1月~12月) – 帝国データバンク
- 石川県の現状と課題
- 2024年度 外資系企業ビジネス実態調査
- ジェトロ対日投資報告 2025
- 第2章 日本の対内直接投資動向
- お知らせ・記者発表
- 2024年外資系企業ビジネス実態アンケート ご協力のお願い
株式会社IPアドバイザリーは、特許や商標の国際出願、海外の特許調査、海外向け資料やウェブサイトの翻訳などの面で、石川県ニッチトップの国際的取引をお手伝いしています。初回相談は無料です。お気軽にご連絡ください。

