特許翻訳トライアル合格の秘訣~9勝1敗の理由がここにある~

目次

特許翻訳トライアル

翻訳者がエージェントなどから仕事を受注する場合は、まずトライアル試験を受けなければならない場合が多いです。トライアルとは、翻訳者がクライアントやエージェントの求めるスキルや品質基準を満たしているかを評価するための試験です。特に特許翻訳や技術翻訳の分野では、専門知識と高い精度が求められるため、慎重に評価されます。

筆者もフリーランス時代を含めこの11年の間に、トライアルを30件近く受験しました。最近ではトライアルで不合格になることはほとんどありません。トライアルに合格するにはどうすればよいのか?という記事をよく見かけますが、筆者のやり方を紹介している記事は見かけなかったので、ここではトライアル合格の秘訣について実体験をもとにまとめてみたいと思います。※特許翻訳限定です。

特許翻訳トライアル合格の秘訣

これから特許翻訳トライルを受験するみなさんに実践していただきたいのは、次の2つです。

普通に翻訳する(トライアル受験時)

知的財産翻訳検定に合格する(トライアル受験準備期間)

特許翻訳トライアルでやらないほうがいいこと

まずは、受験時のポイントである「普通に翻訳する」から説明します。「普通」って?と思われる方がいるかもしれないので、「普通以外のこと」、つまり、トライアルの回答を作成するにあたり、やらないほうがいいこと2つについて説明します。

1.Google Patent から関連特許を検索して回答に写すことは避けてください

特許翻訳トライアルでは、課題の半数以上に関連出願が存在します。間違ってもこれを写したりしないでくさい。その翻訳が正しい保証はありません。熟練者であれば、関連出願の誤りに気づき、それよりも高品質な回答を作成することができます。しかし、初学者であれば関連出願の謝りに気づかないのではないでしょうか。ですので、これに惑わされないでくださいね。ただし、技術用語の参照など、関連出願をスポットで利用するのはよいと思います(しかしこの場合も、自分で納得した用語をチョイスしてください)。

2.出題意図を勘繰らないでください

出題者には、それぞれ意図があります。出題意図には、そのエージェントが普段重視していることが反映されているかもしれません。たとえば、この単語はうちではこう訳してほしいとか、この係り受けはトリッキーだがひっかからないでほしいとか。しかし出題意図は、エージェントごとに異なりますし、どんなに勘ぐっても正しく特定できるとは限りません。最近のトライアルは時間制限があるものも多いので、正解が分からないことに時間を使うのは無駄です。それよりも、ご自身にとってベストの翻訳文を作ることに専念してください。

トライアルでの翻訳で注意すべきことは通常の翻訳と同じ

特許翻訳のトライアルで注意すべきことは、普段受注している案件を翻訳する際に注意していることとまったく同じです。特許翻訳にとって最も重要なポイントは「誰が読んでも一意の解釈になること、疑義の余地を残さないこと」です。出題者の意図がさまざまであっても、目指しているところはこのポイントのはずなので、通常の翻訳どおり、これを目指せばいいと思います。

ここまで読んでお気づきの方もいるかもしれませんが、「普通に翻訳する」というのは、すでにある程度の特許翻訳のスキルを持っている翻訳者が可能なことです。では、特許翻訳のスキルをまだ十分に備えていない翻訳者の場合は、特許翻訳トライアルにどのように対処すればよいでしょうか?とっておきの方法があります。

特許翻訳のレベルをはかる唯一の資格「知的財産翻訳検定」

ここで、受験準備期間のポイントである「知的財産翻訳検定に合格する」について説明します。

特許翻訳トライアルに合格するために役立つこととして、筆者のとっておきのおすすめは特許翻訳のレベルをはかる唯一の資格である「知的財産翻訳検定」を受験することです。初学者の場合、受験できるレベルになるまでは、学習向けのテキストや動画を使って演習したらよいと思います。演習段階が終了したら、次は添削をしてもらう段階に入ると思いますが、この添削のつもりで「知的財産翻訳検定」を受験してみてください。

試験の概要は以下のとおりです。

■『知的財産翻訳検定』とは(今後変更の可能性あり)■

『知的財産翻訳検定』とは、日本で唯一の知的財産翻訳能力認定専門機関である特定非営利活動法人(NPO)日本知的財産翻訳協会(通称“NIPTA”)が2004年12月より実施した知財翻訳試験で、知的財産翻訳の中心である特許明細書などの知的財産に関する翻訳能力を客観的に測るための検定試験です。『知的財産翻訳検定』には、以下の特長があります。

全国どこからでも受験が可能な、電子メール(Eメール)を使用した検定試験です。(第21回検定試験より、従来のオンライン受験から電子メール(Eメール)受験に変更になりました)

<(春)和文英訳・(秋)英文和訳>

試験には、1級、2級、3級の3つの級別出題により、すでに知財翻訳実務に携わっている方から学習者まで幅広く受験に挑んでいただけます。

【1級】以下の分野から選択/記述式

(1)知財法務実務、(2)電気・電子工学、(3)機械工学、(4)化学、(5)バイオテクノロジー

【2級】技術選択なし/記述式

【3級】技術選択なし/記述+選択式問題

<中文和訳(※秋検定試験のみ実施)> 技術選択なし/記述式

<独文和訳(※秋検定試験のみ実施)> 技術選択なし/記述式

引用元:特定非営利活動法人(NPO) 日本知的財産翻訳協会

特許翻訳の資格試験として知的財産翻訳検定がおすすめの理由

知的財産翻訳検定には、過去問や審査官による講評が公開されています。ぜひ読んでみてください。そして準備が整ったらいざ受検です。初学者は3級からトライしたらよいと思います。最後は1級を狙ってください。けっこう難しいので、合格するまで2、3回トライする翻訳者もいると思いますが、実務においてメリットが大きい試験ですし、特許翻訳者にとって唯一のアピールとなる資格試験なので、みなさんにはぜひ受験して合格してほしいです。

1級に合格したら、その時点でかなりの実力が保証されます。「普通に翻訳する」ことで、高品質の翻訳文を作成することができるようになっているはずです。知的財産翻訳検定は、それくらい実務に則した試験です。さらに、けっこう複雑に作り込まれているので、トライアルの練習にももってこいだと思います。

ちなみに、知的財産翻訳検定1級に合格しているとトライアルを免除してくれるエージェントもあります。筆者は知的財産翻訳検定英文和訳1級(電気・電子工学)と中文和訳に合格していますが、中国語のほうはこれまで毎回免除してもらえました。英文和訳は免除してくれないエージェントもありますが、トライアルでは合格できるはずなので大丈夫です。。 したがって、知的財産翻訳検定に合格していると、トライアルに十分合格できるレベルに達することができますし、そもそもトライアルが免除されるケースもあります。

まとめ

まとめると、特許翻訳トライアルに合格できるレベルに達するために、「知的財産翻訳検定1級」に合格し、トライアル受験の際には「普通に翻訳する」ようにしてください。お気づきかもしれませんが、まったくの正攻法です。特許翻訳の場合、あるレベルを超えたら小手先のテクニックは通用しないことが多いです。上級翻訳者は常に本質を見て仕事をしています。みなさんもぜひがんばってください。応援しています。

株式会社IPアドバイザリー
石川県野々市市にて特許関連の各種業務を行なっています。販路開拓や知財コンサル、特許翻訳のことなどどうぞお気軽にお問い合せください。
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