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小松マテーレの先端素材開発に関する特許出願

目次

小松マテーレの工場見学

先日、白山市商工会議所女性会の行事で小松マテーレ株式会社の工場見学に参加しました。そのときに説明していただいた同社の事業、製品、環境に対する取り組みが興味深かったので、本記事で紹介したいと思います。

小松マテーレの会社紹介

小松マテーレは、1943年に石川県で創業。染色を基盤に多彩な事業領域をカバーする「化学素材メーカー」です。

海外のTOPブランドにも供給しているファッション・スポーツなどの衣料分野から、医療関連、建築建材関連、電材関連などの資材分野、さらには炭素繊維や超発泡セラミックス建材など環境共生素材を軸とした先端材料分野まで、幅広く事業展開を行っています。

https://www.komatsumatere.co.jp/company/

fa-bo(ファーボ)

見学では、敷地内にある「小松マテーレ ファブリック・ラボラトリー[ fa-bo(ファーボ)]」を案内していただき、アップサイクル小物づくりを体験しました。

fa-boでは、いたる部分に小松マテーレが独自に開発した素材が用いられていました。たとえば、建物の外装には耐震補強材である「CABKOMA(登録商標)」、屋上の花壇には超微多孔セラミック基盤材「greenbiz」、室内には「TOSPO(登録商標)」や「MONALIZA」といったカーテン素材が備えられていました。

引用:https://www.komatsumatere.co.jp/cabkoma/fabo.html

アップサイクル小物として、縫製工程で廃棄されることになったはぎれを再利用して幼児向けのおもちゃを作りました。また、不要になったマスクの紐を再利用してミサンガを作りました。とても楽しかったです。

見学での案内を通じて、また敷地内のショップにおいて多くの製品を紹介していただきました。高度な技術が使用されていると思われるものばかりでしたので、どのような特許出願がされているのか、製品と照らし合わせながら調べてみました。

小松マテーレの製品と特許出願

世界知的所有権機関(WIPO)の特許検索サービスPATENTSCOPEで小松マテーレ(小松精練含む)の特許を検索したところ、541件が抽出されました。出願推移、出願国、技術分野、特許紹介について以下に記載いたします。特許紹介において、対応すると思われる製品の画像も一緒に掲載しましたが、その対応関係について同社に確認したわけではないので、筆者が独自で推察したものとしてご覧いただけると幸いです。

「マスク」特開2022-189130(2021.6.10出願)

【発明が生まれた背景】プリーツが設けられた従来の不織布マスクは、マスク装着者それぞれの異なる顔の輪郭に十分に追従することができず、マスク本体と顔面との間に隙間が生じるため、マスクの上下および左右から呼気が漏出し、気密性を十分確保することができないという欠点を有していた。顔面との密着性を高くしたマスクも提案されているが、このようなマスクでは、マスクの口や鼻への張り付きによる息苦しさや汗による不快感などによってマスク着用時にストレスを感じることがあった。

【発明の概要】マスク全体が無縫製のよこ編地から作られている。マスク本体に線状の融着糸が編み込まれ、凸状に膨らんだ形態で硬化している。具体的には、マスク本体の鼻から顎に対応する部分に沿って線状に且つマスク本体の前方に凸状に突出するように、融着糸が凸状に膨らんだ形態で硬化している。融着糸を凸状に膨らんだ形態で硬化させることで、マスク本体に椀状の立体形状を与えることができ、口および鼻孔とマスク本体との間に空間を設けることができると同時に立体形状を保持できる形状保持部とすることができる。これにより、マスクの口や鼻への張り付きによる息苦しさや汗による不快感などのマスク着用時のストレスを軽減させることができる。

全文:https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-2022-189130/E181A4768C25BE0F1E538389C72A070AB5749CB9547901F825086F96940BA7D4/11/ja

同社のマスクやマスクインナーの特許は、パンデミックが始まった頃から多く出願されており、機を逃さずに新規事業を展開していることがうかがえます。

右の画像は同社ホームページの商品一覧から引用しました。

引用元:https://komatsumatereonlinestore.jp/products/mask44

「コンクリート補強用繊維強化複合材料、コンクリート構造物」特開2022-126885(2022年7月4日出願)

【発明が生まれた背景】柱や住宅、高層ビル等の建造物にコンクリートを使用する際に、コンクリートの強度を補強するためにコンクリート内部に補強材が配される。補強材が配されたコンクリートとしては、例えば、芯に鉄筋を配した鉄筋コンクリートや、金属繊維を配合した鋼繊維補強コンクリートが挙げられる。さらに近年では、金属に替わる補強材として、例えば、炭素繊維が使用される。しかしながら、従来のサイジング材を付与した炭素繊維や、炭素繊維ストランドは、コンクリートに対する定着力が十分ではなかった。

【発明の概要】コンクリート補強用繊維強化複合材料は、強化繊維の束と熱可塑性樹脂を含む線状物である。強化繊維の束は、強化繊維の単繊維を1000本以上10000本以下束ねたものであり、熱可塑性樹脂は熱可塑性エポキシ樹脂であり、繊維体積含有率(Vf値)が、20%以上40%以下である。このように、コンクリート材に対する高い定着力を有するコンクリート補強用繊維強化複合材料を開発した。

全文:https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-2022-126885/DDB17EC837A5E645D25E9BBE91F034C42E080EDC81093E64E5D114F52DC75F73/11/ja

以下の画像は冒頭で紹介したfa-boの外観です。建物の周りに備えられているのは、炭素繊維を束にした補強材とのことですが、このような炭素繊維が、上記特許ではコンクリート内部に使用されていると思われます。

https://www.komatsumatere.co.jp/cabkoma/

「土嚢及び土嚢の製造方法」特開2022-44562(2021年8月26日出願)

【発明の背景】河川の氾濫、地震などによる水道管の破裂、貯水タンクからの水の漏えいなど大量の水が流出した際、流れ出る水をせき止めるために、ポリエチレン製の袋などに、土、砂利、山砂などを充填した土嚢が従来用いられてきた。しかし袋中の土は重く運搬が困難であり、かつ水を吸うと固まってしまう性質から袋の外形に沿って随意に変形しにくく、並べたり積み上げたりした土嚢同士の隙間から水の侵入を許してしまう課題があった。

【発明の内容】土嚢は、篩分級による粒度が75μm以下の多孔質セラミックス30質量%以上80質量%以下と、篩分級による粒度が75μmを超える砕屑物とを含み、透水性を有する袋中に充填されている。このように粒度が小さい多孔質セラミックスを含む土嚢は、軽量で、形状追随性に優れ、かつ吸湿しても塊になりにくいため土嚢を隙間なく並べたり積み上げたりすることが容易となる。また、充填物を地表に散布するだけで処分することが可能で、長期保存しても変質しにくい効果を有する。

全文:https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-2022-044562/9FF95629D67435866FAEF6D78B0993431A17404FF5E984B1063F24798666F946/11/ja

以下の画像は同社の土嚢製品です。

https://www.komatsumatere.co.jp/greenbiz-donou/

積極的な知財活動

小松マテーレの出願状況をみると、新製品を開発する際に特許出願も必ず行っているような印象を受けました。知財活動を積極的に行っていると思われます。特許のほか商標の出願も盛んに行っており、近年、商標出願件数が急増しています。2021年には442件もの商標を出願し(特許データベースJ-PlatPatで検索)、特許行政年次報告書2022年版では、商標出願件数国内8位を獲得しています。「攻めの知財戦略」をとっていることがうかがえます。

https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2022/

環境保護への取り組み

小松マテーレは、産廃物をリサイクルした材料を使用した製品を多く開発しています。上記に紹介した「geenbiz」もそのひとつです。

「捨てる」から「創る」へ

染色量に比例して排出される余剰バイオマスケイクの有効利用は、我々の長年の課題であり挑戦でした。グリーンビズはこれを原料とし、約1000℃で焼き上げた発泡セラミックスです。

「環境のために、何とかしたい。」

私たちはそんな思いで、「捨てるもの」から新たな価値を創造しています。

同社ホームページ:https://www.komatsumatere.co.jp/greenbiz/developmentstory/

環境への取り組みを紹介したニュースとして、下記が紹介されています。

糸1本から環境配慮 小松マテーレが新技術

小松マテーレは省エネルギーかつ短時間で生地を染色できる新技術を開発し、量産体制に入った。糸の構造を分子レベルで変化させることで、染色時の染料使用量を従来比20%削減、二酸化炭素(CO2)排出量を同31.7%削減できる。同社は2030年までに売上高に占める環境配慮型素材の比率を、現在の約2割から5割以上に高める目標を掲げている。

新技術の名前は「WS(ダブルエス)」。速く染まるため「速染糸」とも呼ぶ。一般的に生地を染めるとき、染料が糸の分子の隙間に入り込むことで定着する仕組みに着目した。独自技術で糸の分子配列に、あえて緩みや隙間を生じさせ、染料が入り込みやすい構造にした。この糸で織った生地は染色性に優れ、低い温度でも短時間で染め上げることができるという。「染料使用量は2割削減、染色時間は5割以上短縮できる」(小川直人常務兼研究開発センター長)。技術は特許出願済み。北陸先端科学技術大学院大学(石川県能美市)と産学連携で分子構造を解析した。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO63480690W2A810C2LB0000/

まとめ

以上、小松マテーレの事業展開と特許や商標に関する知財活動を紹介しました。近年では消費者向け衣料品やアップライクル製品を数多くブランド展開しており、ショップには多くの人が訪れていました。新しい取り組みに連続的にチャレンジし、その成果をもたらすためには、強力な知財戦略が役立つということを同社から学ぶことができるのではないでしょうか。今後の発展にも注目したいと思います。

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株式会社IPアドバイザリー
石川県白山市で特許分析サービスを提供しています

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