工芸とは?
工芸(こうげい)とは、高度の熟練技術を駆使して作られた美的器物またはそれを制作する分野。応用美術、装飾美術などともいう。材料や技術に指定はなく、全てが該当するが、工業生産と美術を結びつけ機能性を重視したものは「近代工芸」と呼ばれる[1]。他、産業や工業につながらない鑑賞性を主体に美術面を重視した物は、絵画や彫刻と同様の展開をみせており、また両者のいずれの傾向にも加わらない古来の手工芸の分野も再評価され,世界的に盛行をみせている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%A5%E8%8A%B8
工芸品は、手仕事や工芸技術を用いて製造されるものであり、装飾や芸術的な側面を持ちます。一方で実用的な用途を持つものもでもあります。たとえば、木工や陶芸などで作られる食器や家具は、工芸品でありながらも日常生活で使われる実用品です。したがって、工芸品にも知的財産権を適用することができます。以下では、工芸品、特に石川県の伝統工芸品を例にとって知的財産権の活用法を紹介します。
伝統工芸品における知的財産権の活用
知的財産権は、伝統工芸品を製造、販売、提供する企業や個人がその伝統工芸品を保護するための手段として利用することができます。また、こうした知的財産権により経済的利益を生み出すことができます。知的財産権には、特許権、実用新案権、意匠権、商標権があります。伝統工芸品を製造、販売する企業や個人は、これらの知的財産権を保有していれば、他者がその伝統工芸品を無断で使用したり複製したりすることを防ぐことができます。また、知的財産権を通じて伝統工芸品を独占的に使用することができるため、独自の商品としての伝統工芸品の価値を高めることができます。
知的財産権を活用するためには、その伝統工芸品が知的財産権を取得できる条件を満たしている必要があります。たとえば、特許権を取得するためには、その伝統工芸品が新しい技術を含んでいる、または独創的である必要があります。また、商標権を取得するためには、その伝統工芸品を識別するために使用されるロゴが他社や個人が使用するロゴと区別できるようにする必要があります。
石川県の伝統工芸品
石川県には金沢箔、九谷焼、輪島塗、加賀友禅など、36業種もの伝統工芸品があります。こうした伝統工芸が盛んな理由として、加賀藩前田家が取り組んだ文化奨励策が挙げられます。加賀藩では、文化振興への注力、職人に育成、工芸見本の取り寄せなどを行い、伝統工芸に熱心に取り組んでいました。
石川県の伝統工芸を以下で示します。
伝統工芸品で活用できる知的財産権の例
特許権
保護対象
発明と呼ばれる比較的程度の高い技術的アイデア。「物」の発明、「方法」の発明及び「物の生産方法」の発明の3タイプがあります
例
- 漆製品の製造方法
- 立体模様製造方法
- 陶磁器
- 仏壇
保護期間
出願から20年
伝統工芸品であっても、伝統+何らかの工夫を行えば、その何らかの工夫部分を特許権として保護することができます。何らかの工夫部分についてちゃんと知的財産権を取得することでパクリを防止し、技術力の高さをアピールすることができます
実用新案権
保護対象
発明ほど高度ではないいわゆるちょっとしたアイデア(小発明)と呼ばれる考案を保護します
例
- 櫛
- 携帯用小物入れ
保護期間
出願から10年
工夫部分がちょっとしたアイデアの場合は実用新案で権利を守ることもできます
意匠権
保護対象
物や建物、画像のデザイン(意匠)を保護します。デザインの一部を部分的に保護することもできます
例
- 着物
- 食卓用皿
- コーヒー碗及び受け皿
保護期間
出願から25年
デザインは模倣されやすいため物の販売、展示会への出品等の前に意匠登録出願を行い、伝統工芸品に施した新しいデザインをちゃんと保護することが重要です
商標権
保護対象
自分が取り扱う商品やサービスと、他人が取り扱う商品やサービスとを区別するための文字やマーク等を保護します
例
- 加賀友禅
- 九谷焼
- 輪島塗
保護期間
登録から10年(10年ごとに更新可)
商標権を取得しておかないといままで使っていた商品名、サービス名、会社名等が使えなくなるおそれがあります。これらの知的財産権のうち最も重要な知的財産権であると言っても過言ではないものです
まとめ
伝統工芸品は、その地域や文化に特有の伝統的な技術や技法を使って作られるものです。それらは非常に貴重であり、その地域や文化を代表するものとして、長年にわたり伝承されてきました。冒頭で述べたように、石川県には数多くの伝統工芸品があります。知的財産権による保護を通じて、これらの伝統工芸品のブランド力を高めたり他者による模倣を防いだりして、伝統工芸の発展を図ることができます。藩政時代から積み上げてきた石川県の伝統工芸を守り、継承していくために、ぜひ知的財産権の活用をご検討いただきたいと思います。