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別川製作所におけるDX取り組みと特許出願

目次

株式会社別川製作所

石川県白山市に株式会社別川製作所という電気機械器具メーカーがあります。技術力に定評のある中堅企業であり、配電盤、分電盤、制御盤、各種監視システムを開発・製造しています。近年では、KNXやIoT、AIなど新しい事業分野への取り組みを積極的に行っています。

『戦略的IoTマネジメント(シリーズ・ケースで読み解く経営学4)内平直志(著)』では、IoTであらゆるセンサー・機械をつなぎ「工場の見える化」を支援する取り組みが紹介されました。また、2022年6月には経済産業省によって「DX認定事業者」に認定されました。

別川製作所ではどのようにしてDX推進に取り組んでいるのでしょうか。同社の事業、製品、特許から見てみたいと思います。

別川製作所におけるDX戦略

DXにおいて別川製作所ではどのような取り組みを行っているのでしょうか。同社ホームページで以下のように紹介されています。

第11次中期経営計画(2021~2023年度)のトップ戦略を実現するためには、社内外に対してそれぞれDXへの取組が不可欠であり、当社は以下のDX戦略に取組みます。

① DXによる生産性・品質向上

2017年からスタートした「スマートファクトリープロジェクト」にて工場のAI・IoT化を進めており、生産性及び品質向上を実現しています。2021年度からは工場だけではなく、本社全体の様々な業務効率化をAI・IoT・RPA等活用し、労働生産性の向上を実現します。

② DXによる新たな付加価値の提供

自社工場のAI・IoT化で得た知見や、社会的課題に対する産学連携による研究開発を通じて、お客様の課題を解決します。

https://www.betsukawa.co.jp/dx/

別川製作所のAI・IoT化事業

AI・IoT化に関する事業として、同じくホームページに以下の事業が紹介されています。

  • 「Wiz・PlaS」:生産スケジュールや在庫、品質管理など、工場全体をトータルに管理できる生産制御システム
  • 「e’Meisterクラウド」:クラウドを利用した施設運用支援システム
  • 「Cue IoT@」:コンパクトなサイズでWEBサーバ機能を搭載し、パソコンやタブレットなどで専用のソフトを使用せずにブラウザでIoT機能を実現
  • KNX事業:世界唯一のオープンプロトコルである「KNX」を用いることで、様々な設備機機器をお好みのパターン制御から自動制御まで、統一言語でのワンアクションにて制御

別川製作所の特許紹介

AI・IoT化に関する技術としては、どのような特許が出願されているのでしょうか。特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」で調べてみました。 1992年から現在まで、14件の特許が出願されています。AI・IoT化に関する特許は2020年から出願されているようです。AIに関する特許とIoT化に関する特許をそれぞれ以下に紹介します。

IoT化に関する特許:特開2020-195132(2020年12月3日出願)

「施設内機器類の遠隔操作システム」

【発明の内容】施設内の機器を遠隔操作するための監視システムにおいて利用シーンごとに機器を遠隔操作することができる。利用シーンは、中央監視システムとチャット機能を通じて対話することで選択することができる⇒シーン制御によってユーザーの利便性を高める

【発明が生まれた背景】施設内機器類の照明や空調などのON、OFFや空調の温度制御は、一律に定まるものではなく、照明のいくつかはONにするが他はOFFにすることがある。空調の温度制御も、それまでの使用状況(午前中は高温で使用していたので午後はそれほど高温にする必要はない場合)、周囲の状況などを照合し合いながら設定することが求められる。このため、これらの照合情報を対話しながら(コミュニケーションしながら)好適な内容に設定する必要がある。また、故障情報の対応についても、故障情報は種々あり、その中から最善の方式に復帰させる必要がある。そのような場合にも、双方向のコミュニケーションしながら好適な内容に設定する必要がある。

引用元:https://patents.google.com/patent/JP2020195132A/ja?oq=JP2020195132A

AIに関する特許:特開2020-192677(2020年12月3日出願)

「対象ワークの識別移載装置及び識別移載方法」

【発明の内容】無造作に積まれた複数の対象ワークから、人工知能(AI)によって得られた情報を基に対象ワークを識別し、移載用のアームロボットからの距離を勘案して捕捉対象ワークとして検出し、捕捉対象ワークの向き、傾きに応じてアームロボットを制御して捕捉・移載する⇒対象ワークの形状や、色、表面の図柄などに関わらず、無造作に配された対象ワークの中から対象ワークを正確に識別して、効率的に運搬する。

【発明が生まれた背景】調味料や具材などの食品を封入した対象ワーク(袋体)を弁当箱などの容器に収容する際に、バラ積みされた袋体を一つずつ正確に認識・捕捉し、効率よく容器に収容することは難しかった。例えば、バラ積みされた袋体が多数入れられたトレーの中では、袋体の重なり度合、形状、向き、傾きなどが雑然とした状態となっており、また、透明な袋体では、袋体の形状を機械では識別できない場合があるといった課題を有する。

引用元:https://patents.google.com/patent/JP2020192677A/ja?oq=JP2020192677

これらの特許はいずれも、別川製作所が2017年から実施している「スマートファクトリープロジェクト」を構成する技術であることがわかります。事業戦略に応じた知財戦略がとられているということですね。

産学連携の取り組み

AI、IoTの技術を活用し、工場設備の異常音を検知するアプリを開発

https://www.kanazawa-it.ac.jp/kitnews/2021/0401_matsui-lab.html

産学協同教育「KITコーオプ教育プログラム」において「点検・最終退社チェックBot」を開発

https://kyodonewsprwire.jp/release/202203289197

DX成功の秘訣

別川製作所はDX推進企業のお手本と言えます。こうした取り組みが成功した背景には、「IoT」という言葉が登場する以前からファクトリー・オートメーションや工場の見える化として「IoT」的な事業に取り組んできたこと、もともとセンサーや製造機械を作っているメーカーではないため、「ハブ」としての強みがあったこと、自律性を重んじる企業風土があること、などが挙げられます(冒頭で紹介した書籍『戦略的IoTマネジメント』より)。

そのほか一般には、DX推進には経営者のITリテラシーの高さ、リーダーシップなどが必要であると言われていますが、こうした特長ももちろん備えていると思われます。

デジタル技術導入のメリット

デジタル技術を導入することで以下のようなメリットが得られます。

  • コスト削減:デジタル技術を活用することで人的な作業や手作業を削減でき、コストを削減できます。
  • 業務の効率化:デジタル技術を活用することで業務をスムーズに進めることができ、効率が向上します。
  • 売上向上:デジタルマーケティングやEコマースを活用することでより多くのお客様と取引することができ、売上が向上する可能性があります。
  • 競争力の向上:デジタル技術を活用することで他社との差別化を図ることができ、競争力を高めることができます。

まとめ

DXを実施する際には、現状を把握し、課題を抽出し、デジタル技術を活用できる部分を特定します。次いで、導入するデジタル技術やツールを選定し、導入計画を立てます。導入後は、デジタル技術を活用したビジネスプロセスやカスタマーエクスペリエンスを常に改善していくことにつとめます。

こうした過程において、新製品、新サービスが開発される可能性があります。その場合、上記特許出願の例にあるように、知的財産権について考慮することが推奨されます。ビジネスチャンスにつながる可能性は大いにあります。DX導入のための新技術に特許権が付与されていると、市場でより高い競争力を確保することができるでしょう。

ただしDX導入においては、事業における目標やDXで実現したいことをしっかりと定めて取り組む必要があります(DXは手段であって目的ではない)。知財活動においても同様のことが言えます。知財は事業成長にとっての手段であり目的ではありません。特許を取得することで事業成長にどのような価値がもたらされるのかをしっかりと検討したうえ、知財戦略を定める必要があります。別川製作所ではこれらの戦略を適切に立案し、実行していると思われ、今後の取り組みにも期待できます。

IPアドバイザリーでは、知財戦略を考慮したデジタル技術導入に関するご相談もお受けしております。お気軽にお問い合わせください。

株式会社IPアドバイザリー
石川県白山市で特許分析サービスを提供しています

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