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株式会社石野製作所が誇る技術と特許

目次

日経新聞(2022年12月19日)掲載の記事より

回転ずしコンベヤー、世界で需要 金沢企業が生産力倍増 回転ずし最前線㊤

回転ずしコンベヤー最大手の石野製作所(金沢市)は、新工場を設立し、生産能力を倍増する。中国などアジア圏から大型コンベヤーの受注が増えているほか、省人化のため焼き肉など他業態からも引き合いが増加している。すしコンベヤーを同社が発明して半世紀。進化し続け、世界市場に挑む。

日経新聞 2022年12月19日(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC030Y00T01C22A2000000/

株式会社石野製作所の製造する回転ずしコンベヤーは、国内シェア60%を誇り、世界的にも広く展開されています。石野製作所は石川県においてニッチトップの代表企業として知られており、その活躍が上記新聞記事に紹介されました。ニッチトップ企業として走り続けるために、どのような企業努力が行われているのでしょうか。石野製作所における特許出願や知財活動からひも解いてみたいと思います。

株式会社石野製作所の企業紹介

昭和34年に小さな町工場としてスタートし、昭和49年にコンベアと自動給茶装置を一つにした「自動給茶装置付き寿司コンベア」で、日本の伝統的な食文化である「寿司」に、革命的な価格と価値をもたらしました。以降、回転寿司は急速に発展し多様なニーズが生まれました。早くから製販分離体制を敷いた石野グループは、そのニーズを的確にキャッチし、他社に先駆けてさまざまな機器を提案して回転寿業界の発展に貢献してきました。またこの組織力を駆使して、外食産業を対象とした食品加工機械の開発も手掛けています。

同社HP(https://www.ishino-group.com/group/

石野製作所の知財戦略~ITビジネスプラザ武蔵 企業取材レポートより~

自社製品の知的財産権の保護を徹底する

設立当初から、知的財産の管理にいち早く取り組んできた。麻袋の口を開いて米を入れ易くする「イシノ式麻袋開口器」を製作。これにより2人がかりでやっていた作業が1人でできるようになるとあって、各県農協経済連を通して販売して、約20万台もの販売実績を上げた。すぐに実用新案として出願登録して権利を取得。これ以来、ずっと自社製品の特許を申請している。今までに370件以上特許出願しており、知的財産管理については先端的に取り組んでいる中小企業である。

強い権利にするためには、技術は特許、デザインは意匠、名称は商標で、といった具合に、知財ミックスして徹底管理されている。回転寿司コンベアシステムが国内シェア60%以上を占める成功の理由には、この知財戦略が大きく関わっていると考えられる。

出願後の権利の維持にも苦心する。外国から同じような製品が入ってきた際には、これに対して、当社の権利に抵触するのではないかといった内容の書面を送り、今後一切つくらせないやりとりを行うこともある。実際には、厨房の中に入ってしまうような製品だと目にしない限りわからないこともあるが、特許がなかったらもっと類似商品が出てくるのではないかと考え、「攻めの知財戦略」は今後も継続していく。知財管理については社内で担当を設け、管理する者は権利の維持についても常に気をつけて行っている。そもそも、これもまた以前より特許や意匠の必要性・重要性を強く感じて、力を入れていたこと。もちろん、ヒットした特急レーン「かがやき」も1点ごとに意匠登録されており、他が同じものを手がけることはできないようになっている。

ITビジネスプラザ武蔵 企業取材レポート #3 株式会社石野製作所(https://www.bp-musashi.jp/report/k-03.html

石野製作所から出願されている特許

石野製作所からは実際にはどのような特許が出願されているのか見ていましょう。1975年から現在までに480件の特許が出願されています。出願推移、国際出願割合、出願技術分野についてグラフで以下にまとめました。石野製作所の特許を集計するにあたり、特許情報プラットフォーム「JPlatPat」または世界知的所有権機関(WIPO)の「PATENTSCOPE」を利用しました。

  1. 出願推移

上記グラフでは便宜上、1982~2021年までに出願された462件を集計しました。出願件数は2000年前後に増加がみられましたが、それ以外は毎年一定の件数が出願されています。2021年の件数が少ないのは、特許データベースのタイムラグ(特許は出願されてから1.5年後に公開される)の影響であると思われます。

2. 国際出願割合(時系列)

上記グラフでは、過去10年間の出願を集計しました(以下3のデータ範囲についても同様です)。グラフのうち、オレンジ色の「PCT」という項目が国際出願から国際出願件数がわかります。毎年、1件ほど出願されてるようですが、回転ずしコンベヤーを海外展開するに伴う国際出願であると思われます(国際出願について詳しくは、「外国出願の方法とは?│グルーバルポートフォリオ構築の出発点」の記事をご覧ください)。

3. 出願技術分野(時系列)

特許が出願されると、特許庁により技術分類コードが各特許に付与されます。技術分類コードにはいくつか種類がありますが、上記集計(WIPOのPATENTSCOPE利用)では国際特許分類(IPC)が使用されています。

グラフを見ると、上位3つの技術分野は、1位:家庭用具/食卓用具、2位:運搬/貯蔵装置、3位:家庭の洗浄/清浄であることがわかります。このように特許を分析してみると、事業展開と照らし合わせながら知財戦略を見ることができます。

石野製作所の特許紹介

上記引用記事に記載されている昭和49年に開発されたコンベアと自動給茶装置を一つにした「自動給茶装置付き寿司コンベア」に関する特許を調べたところ、直接同じ構造を有する特許は見つかりませんでした。以下では、この類型と思われる「多段式コンベア付飲食カウンター装置」という名称で出願されていた料理搬送用ベルトコンベアの特許を紹介します。また、最近の出願もあわせて紹介します。

特許出願 昭53-100058号『多段式コンベア付飲食カウンター装置』1977年2月14日出願

【特許の内容】飲食カウンターと料理搬送用コンベアを組み合わせて成る調理飲食装置に於いて、料理搬送用コンベアを2段以上の多段に設けたことを特徴とする多段式コンベア付飲食カウンター装置。

【発明の背景】本発明は飲食のためのカウンターに座った客の数と調理された料理の搬送量とのバランスを計ることが出来ると共に如何なる形体の店に於いても料理搬送装置を駆使出来る様にしたことを目的とした装置に関する。

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-S53-100058/F211F67A3934A088BB06FB013CDAEB66076642B4C23F98163A5BD158E07D4F33/11/ja

特許出願 特開2022-090320号『ゆで卵殻割り装置』

【特許の内容】進入部16から排出部17まで周方向に延設されるゆで卵の移送路50と、噴射装置95からゆで卵へ水を噴射可能としたまま、外ドラム80と噴射装置95との間において移送路50を移動する収容部Tを外ドラム80の外側から覆うように設けられるカバー体としての複数本のカバー棒材91と、を備え、カバー棒材91は、外ドラム80及び内ドラム70とは別個の所定部材としての左側板90L,右側板90Rに固定され、仕切部82Aを構成する複数の外側棒材82のうち最も外側の外側棒材82に近接して配置される。

【発明の課題】大量のゆで卵を破損させることなくスムーズに上方向に移送させることができるゆで卵移送装置を提供する。

この特許に対応する商品は右図の「カラトル」という商品のようです。

「カラトル」という名称は商標(第6498853号)として登録されていました。

画像引用元:https://www.ipros.jp/product/detail/2000655850/

まとめ

知財戦略のなかに「オープン&クローズ戦略」というものがあります。他者から見える技術は公開し(オープン)、見えない部分は公開しない(クローズ)といった戦略です。上記レポートにあるように、厨房に置かれている機械は厨房に入らない限り見ることはできません。しかし石野製作所では、模倣品防止の観点から特許として出願して公開しました。つまり、オープン戦略をとったと考えられます。

また、特許として出願する技術に関しては商標や意匠の出願も徹底して行われており、適切な知財戦略をとることでニッチトップの座を維持しているのではないでしょうか。小さな会社が大きく勝つために知的財産権を活用することは有効な手段のひとつであると言えます。

IPアドバイザリーでは、上記のような特定企業の特許分析情報を調べるための特許分析サービスを提供しています。また、特許調査・分析方法の教育やセミナーも行っています。お気軽にお問い合わせください。

株式会社IPアドバイザリー
石川県白山市で特許分析サービスを提供しています

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