フィンテックとは?
フィンテック(FinTech)とは、「Finance」と「Technology」を組み合わせた言葉で、金融サービスとIT技術を融合させた革新的な動きを指します。フィンテックは、決済、銀行、投資、保険、データ分析など、大きく6種類に分類されます。フィンテックソリューションを導入することで、顧客体験の向上、コスト削減、効率化、セキュリティの向上など、金融機関に多くのメリットをもたらすことができます。
日本におけるフィンテック
日本でのフィンテックは近年、モバイル決済やオンラインバンキングを中心に発展しています。日本政府も規制のサンドボックス制度などを通じて、フィンテックの発展を促進しています。日本における注目すべきフィンテック企業には、楽天、LINE、SBIホールディングスなどがあります。日本の銀行業界は、金融情勢の変化に対応するため、フィンテックのスタートアップ企業への投資を積極的に行っています。
石川県におけるフィンテック
石川県でフィンテック事業を展開している企業として、北國フィナンシャルホールディングスが知られているかと思います。 同社のフィンテック事業に関して、2023年1月23日発行の日本経済新聞に下記の記事が掲載されました。
北国フィナンシャルホールディングス(FHD)がエンベデッド・ファイナンス(組み込み型金融)を見据えたデジタルプラットフォームの開発に乗り出す。決済や融資の機能を取引先である小売業などの非金融企業に提供し、サービスの拡充や生産性向上を支援する。北国FHDはデジタル上で取引先の動きをつかみ、業務改善や投資を提案する機会を探る。
(中略)
プラットフォームは同社の勘定系システムやインターネットバンキング(IB)などを統合し、取引先に金融機能を提供する。BaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)基盤と呼ばれ、プログラム同士を連携させるAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)技術を使い取引先のアプリに連携させる。同社の投資額は総額200億円になる見込みで、2〜3年後の完成を目指す。
例えば自動車販売店が活用する場合、車の購入を希望する顧客は、アプリ上でローンを組めるようになる。北国FHDが持つ顧客情報を活用することで、短時間で審査を終えることができ、契約が早く進む。飲食店では座席の予約や注文が1つのアプリで完結し、代金の支払い時に口座からリアルタイムで引き落とされる。組み込むためのアプリを持たない顧客には北国FHDが提供できる体制も作る考えだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC19BTB0Z10C23A1000000/
埋め込み型金融(エンベデッドファイナンス、プラグイン金融とも呼ばれる)とは、金融サービスを非金融プラットフォーム、アプリケーション、デジタル製品に融合させる統合戦略です。オープンバンキングを銀行視点から捉えたものが「BaaS」と呼ばれ、外部事業者視点で捉えたものが「埋め込み型金融」と呼ばれています。埋め込み型金融は、フィンテックの新しい形として注目されています。金融機関が金融機能をサービスとして提供したり、金融機関以外の企業が金融機能を簡単にビジネスに取り入れたりする埋め込み型金融は、今後ますます注目されると予想されています。
北國FHDは、2021年5月にパブリッククラウドを活用した国内初のフルバンキングシステムを稼働させました。また、「Embedded Finance Week 2022」に参加し、デジタル給与計算や百貨店事業×金融事業などをテーマとしたセッションを開催しました。2023年に向けた中長期経営戦略として、デジタルトランスフォーメーション(DX)を活用して成果を上げることを掲げています。 北國FHDグループである北國銀行は、2021年9月に経済産業省から「DX(デジタルトランスフォーメーション)認定事業者」の認証を受けました。これは地方銀行として初めての認定でした。このことからも同行のDXに対する積極的な取り組みがうかがえます。
石川県内の企業のフィンテック関連特許
日本はフィンテックの発展を進めているものの、海外から大きく遅れをとっていると言われてきました。さて石川県では、上記北國FHDの事例のほかに、どのようなフィンテック事業が展開されているのでしょうか。石川県内の企業からのフィンテック関連の特許出願状況を調べてみました。
特許検索は、J-PlatPat で行いました。検索では、IPC分類(国際特許分類。特許出願時に特許庁から付与される特許技術分類)として、フィンテックに関する分類である「G06Q20(支払アーキテクチャ、スキーム、またはプロトコル)」と、「G06Q40(金融、保険、税戦略、法人税または所得税の処理)」を指定し、出願人住所を石川県に指定しました。
下表は、ここ10年の出願をまとめたものです。出願日の最新のものが2022/9/9になっていますが、特許は出願されてから公開されるまでに1年半かかるので、そのタイムラグが影響しており、2022年後半と2023年の出願が反映されていないものと思われます。
フィンテックの戦略的特許出願
インドの特許調査会社Sagacious Research(株式会社IPアドバイザリーが海外特許調査において連携している企業です)は、自社のブログで、フィンテック特許について下記のように述べています。元の英文を日本語に要約したものをご紹介いたします。
フィンテックは、テクノロジーを使って金融活動を改善する新興産業です。フィンテックにおける特許出願は、商標や著作権と比較して強い影響力を持ちます。
フィンテック技術を特許として保護することは、フィンテック企業が取り組むべき重要な要素の1つでしょう。このことは、フィンテックのスタートアップ企業に特に当てはまります。スタートアップ企業は斬新なソリューションを生み出すために、多くの時間、労力、開発コストを費やしています。新しいアイデアが生まれると、適切に特許出願を行い、その権利を保護して優位性を確保する必要があります。このような理由から、現在フィンテック業界での特許出願が急増しています。
フィンテックにおける特許の優位性として下記の点が挙げられます。
・市場シェアの獲得
・特許出願は大きな価値をもたらすものです。市場の潜在的な投資家からの投資を呼び込むことができます。
・著作権とは異なり、特許は発明の機能を保護することができます。技術(方法、プロセス、装置)を特許権で保護すると、第三者による利用を防ぐことができます。特許権者は、収益化またはライセンスの面で発明を独占することができます。これは、企業の知名度を大幅に向上させる貴重な収益源となります。フィンテックの特許の価値を考えると、その発明の保護は全体的な知財戦略の一部であるべきです。イノベーションを市場に投入する予定がない場合でも、コンセプトの段階で発明を権利化することを検討することが重要です。
フィンテックに関する法令は動的に変化しています。したがって、特許出願を効果的に行うためにはまず、特許取得のための基本的な手順を確認することから始めるとよいでしょう。フィンテックの特許出願においては、その技術的なアイデアが、金融問題の解決につながるような変化をもたらすかどうかを確認することが重要です。
フィンテックの特許は、金融取引のネットワークセキュリティの向上、革新的なインターフェース、コンピュータリソースの利用効率の向上、ネットワークトラフィック速度の信頼性向上など、業界標準を満たすものでなければなりません。
一方、すべてのアイデアに特許出願が適しているわけではないことにも留意する必要があります。専門家を通じて、発明の特許性を評価・検討することが重要です。
https://sagaciousresearch.com/blog/why-important-file-patents-fintech/
付録(参考図)
ビジネスモデル特許(フィンテック含む)の特許出願状況(海外)
ビジネスモデル特許(フィンテック含む)の特許出願状況(日本)