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外国出願の方法とは?│グルーバルポートフォリオ構築の出発点

国際化が高度に進んだ今日。企業は、グローバルポートフォリオの構築のため、日本だけでなく、海外への特許出願を多く行っています。特に、GDP1位であるアメリカへは、日本企業が外国出願する際の第1選択肢、といっても過言でないと思います。

 この記事にご興味のある方は、米国特許法を大まかにご存知であるかと存じます。しかしながら、この記事では、「特許翻訳のプロ」の視点から、米国に特許出願する際に知っておくべきことを紹介します。

目次

外国出願とは

  国際社会が一段と進んでいる今日。特許権は、「属地主義」であるため、特許を取得した国でしか有効ではありません。(たまに詐欺で謳われる「国際特許」というものは存在しません。)したがって、企業は、海外事業展開の事情に合わせてグローバルポートフォリオの構築を進めるために、国内だけでなく、海外での特許権取得も進める傾向にあります。

 さて、海外への特許出願は、一般に、外国出願と呼ばれます。外国出願を行っている企業の方はご存知かと存じますが、外国出願のルートは、主に、「パリルート」及び「PCTルート」と、外国への第1国出願とがあります。 この記事では、この3つのルートでの外国出願について、説明します。 

パリ条約〜外国出願といったらコレ!〜

  外国出願を語るにあたり、「パリ条約」を外すことはできません。

 1883年、フランスのパリにおいて、工業所有権(特許権、商標権等)の保護を目的として、「工業所有権の保護に関するパリ条約」が制定されました。これが、特許出願でよく耳にする、「パリ条約」です。なお、パリ条約は、数回の改正がなされており、正式名称は、「千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にヘーグで、千九百三十四年六月二日にロンドンで、千九百五十八年十月三十一日にリスボンで及び千九百六十七年七月十四日にストックホルムで改正された工業所有権の保護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ条約」となっています。

 さて、パリ条約の第4条では、「優先権」が謳われており、ここでは、概して、特許に関し、

・いずれかの同盟国において正規に特許出願をした者は、他の同盟国において出願することに関し、優先期間(特許は12箇月)中優先権を有する。
・優先期間の満了前に他の同盟国においてされた後の出願は、その間に行われた行為によって不利な取扱を受けないものとする(例:新規性、進歩性の判断基準は、先の出願の出願日を基準とする)

と規定されています。

 したがって、日本出願と同じ内容の発明をパリ条約で規定されている優先権を主張して海外に特許出願をすることにより、その外国出願の特許性の判断は、日本出願の出願日を基準として行われます。なお、パリ条約の加盟国は171カ国であり、日本や、日本企業が外国出願をする主だった国は、パリ条約に加盟しています。

出願ルートその1〜パリルート〜

(1)パリルートの概要

パリ出願のルート

 パリルートは、パリ条約に基づき、基礎出願の優先権を主張して、外国出願をするルートです。パリルートでは、出願する国それぞれに出願をする、というイメージです。

(2)パリルートのメリット
 パリルートでの出願は、主に以下のメリットがあります

(A)出願国数が少ない場合、PCTルートよりも費用を抑えることができる
 以下に説明するPCTルートでは、(a)PCT出願の費用、(b)各国への国内移行にかかる費用(翻訳、プラクティスに合わせた補正等)、などがかかります。出願国数が多い場合には、PCT出願にかかる費用が頭割りできるため負担が少なくなりますが、出願国数が少ない場合には、パリルートでの出願の方が、PCTルートでの出願に比べて、費用を抑えることができる場合があります。

(B)権利化までの時間を短くできる
 パリルートは、各国への出願のため、PCTルートよりも、各国での早期権利化を図ることができます。

(C)出願国に合わせた出願ができる
 パリルートでは、出願国のプラクティスに合わせて、またその国での事業に合わせて出願内容を変更できます(ただし、優先権が効くのは、あくまで基礎出願に記載した内容のみです)。

(D)PCT非加盟国に出願できる
 台湾など、PCT非加盟国にも、パリルートでは出願をすることができます。

(2)パリルートのデメリット
 パリルートのデメリットを強いて挙げるとすると、外国出願の期限が短いことが挙げられます。先に説明したように、パリ条約で定められた優先期間は、特許の場合、12箇月です。研究段階にあり、事業化の目処は立ってないものであっても、基礎出願から12箇月以内に外国出願をしなければ、基礎出願の優先権を主張することができません。

外国出願には、現地語への翻訳や、現地代理人への依頼が必要です。そのため、外国出願の要否の見極めの期間は、12箇月よりもさらに短くなります。外国出願をした発明が、事業的に権利化不要となった場合、外国出願が無駄になる可能性があります。この場合、費用は高くついてしまいます。 

出願ルートその2〜PCTルート〜

(1)PCTルートの概要
 PCTルートは、概して、PCT出願をした後、各国に出願をするルートです。 

PCT出願のルート

 PCT出願とは、特許協力条約(PCT: Patent Cooperation Treaty)に基づく国際出願のこと指します。PCT出願では、指定官庁(日本国特許庁など)に対して出願手続きを行うことによって、PCT条約の加盟国全てに同時に出願をしたのと同じ効果を得ることができます。

 出願人は、直接PCT出願をすることができますし、先の国内出願についてパリ条約に基づく優先権を主張してPCT出願をすることができます。PCT出願をした後、優先日から30箇月以内に、各国への国内移行を行う必要があります。言い換えると、PCTルートでの外国出願の期限は、優先日から30箇月以内となります。

(2)PCTルートのメリット
 PCTルートのメリットとしては、主に以下の点を挙げることができます。

(A)外国出願の期限が30箇月となる
 先に述べたように、PCTルートでは、外国出願の期限が、実質上30箇月となります。そのため、外国出願の要否の検討の猶予が、パリルートよりも18箇月も伸びます。研究段階にある技術を事業化するか否かの判断を1年以内で行うことができることの方が珍しいと思われます。例えば、外国出願の可能性を考えてPCT出願をした後に、外国出願不要との判断が下された場合、各国移行をしなければ、不要な翻訳代、現地費用などを節約することができます。

 一方、パリルートでは、先の出願から12箇月のうちに外国出願をしなければなりません。そのため、仮に先の出願から12箇月以内に外国出願をし、その2年後に外国出願不要との判断が下された場合、翻訳代、現地費用などが無駄になってしまいます。

(B)国際調査報告を受け取れる
 PCT出願をすると、国際調査機関からの報告書である、国際調査報告書(International Search Report)を受け取ることができます。この国際調査報告書は、当該国際出願に関する特許性についての調査報告が含まれます。この調査報告を、外国出願の要否判断に利用することができます。

(3)PCTルートのデメリット
 PCTルートのデメリットとしては、以下の点が挙げられます。

(a)PCT非加盟国に出願できない
 PCTルートの最大のデメリットは、PCT非加盟国への出願ができないことです。例えば、台湾は、PCT非加盟国なので、PCTルートを利用することができません。

(b)費用が高くなる場合がある
 また、先に述べましたが、移行国が少ない場合、PCTルートの方が費用が高くなることがあります。

(c)国ごとに出願内容を変えることができない
 PCT出願からの各国移行では、PCT出願の内容をそのまま移行することになります。翻訳も逐語訳である必要があります(ミラー翻訳)。そのため、国ごとに内容を変えることができませんし、国ごとのプラクティスに合わせるためには補正等が必要となります。

 外国出願の第1選択肢として選ばれることが多いと思われる米国への各国移行も、注意が必要です。ただし、次項で説明するように、PCTルートでの米国への出願は、米国のプラクティスに合わせたり、内容を追加することができる方策があります。

(d)日本語で日本国特許庁にPCT出願をした場合、米国での後願排除効が実際の米国出願日(移行日)となる
 日本語で日本国特許庁にPCT出願をした場合には、米国での後願排除効(米国特許法102条(e))が実際の米国出願日(移行日)となります。

 パリルートでは基礎出願から12箇月以内に米国出願をするのに対し、PCTルートでは基礎出願から最長30箇月以内に米国出願をします。基礎出願からの日数が経てば経つほど後願排除効が効く日にちが遅くなるので、PCTルートでは、パリルートよりも後願排除効が効く日が遅くなり得ます。これは、出願猶予のメリットの裏返しのデメリットです。

(4)PCT出願からのアメリカ合衆国への各国移行
 日本の企業は、おそらく、マルチクレームを含んだ請求の範囲でPCT出願をすることが多いと思います。しかし、アメリカ合衆国では、クレームがマルチクレームを含んでいた場合、出願費用が嵩んでしまいます。また、アメリカ合衆国では、マルチのマルチクレームは認められません。

 上記問題を解決する方策として、アメリカ合衆国へ各国移行する場合、以下の手段を講じることが考えられます。
・出願後、自発補正をする(通常移行);
・バイパス継続出願をする(継続性移行)

 継続性移行の際、一部継続出願(CIP)を選択すれば、新規事項を追加することもできます(追加した部分には、優先権は聞かず、実際の出願日が有効出願日となります)。継続性移行では、PCT出願での誤記を訂正した内容で出願することができます。そして、継続性移行には主だったデメリットはないといえます。 

出願ルートその3〜外国への第1国出願〜

 第3のルートとしては、外国への第1国出願が挙げられます。このルートは、優先権主張を伴わないルートです。

 米国出願に関しては、早く米国出願をした方が、後願排除効(102条(e))が早く効きます。日本語による仮出願でも、この効果を利用することができます。米国第1国出願のメリットとしては、この点を挙げることができます。また、中国では、中国で完成された発明は、中国を第1国出願しなければなりません。外国への第1国出願のデメリットは、翻訳完成の猶予が短いという点です。

まとめ

事業のグローバルポートフォリオを確立するためには、外国への特許出願が不可欠です。外国へ特許を出願する際には、外国出願の方法、利用できる制度、各制度のメリットとデメリットを知っておくと、できるだけ費用を抑えて効率的に外国出願を行うことができます。IPOMOEAは、外国への特許出願方法について熟知しており、米国、中国、台湾への同時出願にも対応できることから、さらに費用を抑えつつ出願の質を高め、貴社のグローバル化に大いにお役に立てると考えております。

株式会社IPアドバイザリー
石川県白山市で特許分析サービスを提供しています

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