北國新聞の記事から
2022年12月26日発行の「北國新聞」の社説に以下の記事が掲載されました。
ルビーロマンの韓国流出
上記の記事を読んで「ルビーロマン騒動」を思い出した方もいると思います。
「ルビーロマン」とは、石川県砂丘地農業研究センターが14年間かけて開発し、2008年から販売されている高級ブドウです。粒が大きく鮮やかな紅色で、1粒20グラム以上、糖度18度以上、均一な着色といった厳格な出荷基準を満たしています。
このルビーロマンとみられるブドウが、韓国で流通するという騒動が起きました(石川県が韓国内で購入した商品をDNA鑑定したところ遺伝子型が一致)。ルビーロマンの名称について、韓国の関係企業どうしで品種名と商標を巡る紛争が起きていましたが、業界内でも「日本で開発された高付加価値の品種」と認識されていたとみられています。本件は最終的に、韓国においてルビーロマンの名称は石川県が開発した品種を指すものとして先に使用されていたと判断されました。
ルビーロマン韓国流出の経緯として、石川県で所定期間内にルビーロマン品種保護のための手続きをとらなかったことがあります。その結果、韓国では誰でも申告すればルビーロマンを生産・販売できる状態となっていました。同じような事例として、シャインマスカットと紅ほっぺの中国流出が挙げられます。
農産物輸出における知的財産の保護
こうした問題を防ぐためにはどうすればよかったでしょうか?
ルビーロマンの韓国流出は、農産物輸出の際に知的財産の保護について考慮しなければいけないことが浮き彫りになった騒動でした。それでは以下で、農作物を輸出する際に必要な手続きを紹介します。
農作物の輸出には、品種登録と商標が重要な役割を果たします。
海外で品種登録を受けることで、輸出先での農作物の品種の特徴や性質が保証されるようになります。また、品種登録された農作物は他の品種と区別され、輸出先での評価や信頼度が向上することが期待されます。さらに、品種登録を受けることで農作物を使用して生産や販売することが許可されるようになり、知的財産権の違反や法的問題を回避できるようになります。
商標登録とは、商品やサービスを識別するためのマークを登録することを指します。農作物を輸出する際には、商標を登録することで、その農作物を識別することができるようになります。これにより輸出先での評価や信頼度が向上することが期待されます。さらに、他社が同じような商品を販売することを防ぐことができます。
まとめ
輸出する農産物を知的財産として適切に保護できなければ、ビジネスチャンスを逃してしまう可能性があります。また、さまざまなリスクにさらされる可能性もあります。
上記で紹介したような知財制度を活用することで、日本で特産品やブランド品として流通している農作物の「本物」を守ることができます。しかしながら現状では、日本の農業関係者は海外での農作物保護の必要性をあまり認識していないという問題があります。また、こうした知財制度の運用は小規模な農家などでは難しく、上記の引用記事に記載にあるように地域や国と連携してすすめる必要があります。
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