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米国で特許出願する際のポイント3選

国際化が高度に進んだ今日。企業は、グローバルポートフォリオの構築のため、日本だけでなく、海外への特許出願を多く行っています。特に、GDP1位であるアメリカへは、日本企業が外国出願する際の第1選択肢、といっても過言でないと思います。

 この記事にご興味のある方は、米国特許法を大まかにご存知であるかと存じます。しかしながら、この記事では、「特許翻訳のプロ」の視点から、米国に特許出願する際に知っておくべきことを紹介します。

目次

米国特許法における特許適格性って何?

米国の特許法は、日本の特許法と共通する点もあれば、異なる点も多くあります。

 重要な相違点の一つとして、発明の保護対象が挙げられます。

 日本の特許法での発明の保護対象は、特許法第2条に規定されているように、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」です。自然法則自体は、保護対象ではありません。
 そして、保護対象の発明は、「物」の発明、「方法」の発明、「物の製造方法」の発明の三つに大きく分かれます。また、特許法第2条第3号で、「物」が「プログラム等を含む」と規定されています。
 そして、特許法第29条柱書きにて、産業上利用することができる発明をしたものがその発明についての特許を受けることができることが規定されています。すなわち、保護対象は、産業上利用可能な発明です。例えば、手術方法、診断方法は、産業上利用可能な発明とされていません。

 一方、米国特許法での保護対象は、「特許適格性」のある発明として、米国特許法第101条で、
・プロセス(方法);
・機械;
・生産物;
・組成物
であると規定されています。

 米国では、日本とは違い、コンピュータプログラムは保護対象ではありません。
 医療行為は、保護対象ではありますが、特許法第287条にて、医療方法に対しての特許権は原則として医師などによる医療行為には及ばないことが規定されています。

 また、米国では、特許保護適格性があるか(法定の保護対象であるか)の判断に、「abstract idea(抽象的アイデア)」が絡んできます。これは、最高裁判所で出された、特許対象の例外に関する判決(Diamond v. Chakrabarty, 447 U.S. 303(1980))及びAlice判決(Alice Corp. Pty. Ltd. v. CLS Bank Int’l, 134 S.Ct. 2347 (2014)に基づいています。

 抽象的アイデアとは、「数学的概念」「人間の活動を体系化する方法」「思考的プロセス」です。したがって、AI関連の出願は特に注意が必要です。

 特許保護適格性の判断においては、自然法則、自然現象及び抽象的アイデア(これらをまとめて司法例外)がクレームに記載されているか、記載されている場合には司法例外を実用的応用に組み込む追加の要素がクレームに記載されているか、が判断されます。

 例えば、抽象的アイデアがクレームに記載されており、かつ実用的応用のための要素がクレームにない場合、特許適格性がないと判断される可能性があります。

 IPアドバイザリーでは、明細書及びクレームの内容を十分に理解した上で、特許翻訳を行います。そのため、翻訳の際、クレームがプログラムに関する発明を記載したものであること、クレームが抽象的アイデアを含んでいると思われることに気づくことができます。したがって、IPアドバイザリーに米国出願用の翻訳をご依頼いただければ;
・プログラムクレームがある場合、例えばプログラムを格納した記録媒体に書き換えることをご提案いたします;
・クレームにabstract ideaが含まれていると思われる場合、その旨をお伝えいたします。 

IDSに注意!

日本でのプラクティスとの大きな違いの他の一つとして、米国では、情報開示義務(米国特許規則§1.56(a))があることが挙げられます。

 上記米国特許規則では、特許性にとって重要であることが分かっている全ての情報を米国特許商標庁に開示する義務があることが規定されています。

 義務を負うものは、
・出願に記名されている全ての発明者
・出願を準備し又はその手続きを遂行する全ての代理人
・出願の準備又は手続の遂行に実質的に関与しており、また、発明者、出願人、譲受人又は出願譲渡 義務の対象である者に関係している他の全ての者
とされています。

 具体的には、発明者、並びに出願に関与する企業の知財部員及び日本の代理人等が、情報開示義務を負います(事務員等は義務を負わない、と言われています)。

 情報開示義務を履行するために提出するのが、IDS(information discloser statement)です。

 提出すべき情報を開示しない場合、仮に故意でなかったとしても特許庁に対して不実な手続きをしたと判断される恐れがあります。この場合、仮に特許となっても、フロード(不公正行為)と呼ばれ、権利行使ができなくなります。よって、日本特許法にはない、このIDSの提出には注意が必要です。

 なお、IDSで提出すべき情報の出どころは、限定されず、当該出願の特許性に関する情報は全て開示する必要があります。すなわち、
・当該出願の対応外国出願で挙げられた引用文献;
・関連米国出願で挙げられた引用文献;
・関連する訴訟等で得られた情報
などが挙げられます。

 よって、米国出願をした場合、他国で挙げられた引用文献を、網羅的に提出する必要があります。また、関連すると認識している出願がある場合は、相互IDSの提出の要否の検討も必要です。

 提出時期は、
(a) 出願日(国際出願からの移行の場合は国内移行日)から3ヶ月以内又は最初の実体的拒絶理由通知までのいずれか遅い方。
(b) その後、最後の拒絶理由通知又は許可通知まで。
(c) その後、特許料納付まで。
(d) その後、特許証発行まで。
となっています。

 知り得た情報は、速やかにIDSで提出する必要があります。その理由は、以下の通りです。

 (b)の期間でIDSを無料で行うためには、特許性に関する情報を知ってから3ヶ月以内に提出する必要があります。3ヶ月を過ぎて提出する場合、手数料がかかります。
 (c)の期間でIDSを行うためには手数料がかかります。さらに、知ってから3ヶ月を過ぎていた場合などでは、IDS考慮してもらうためにRCEが必要となります。
 (d)の期間でIDSを行うためには、特許発行の取下とともに、RCEが必要となります。ただし、QPIDSプログラムを用いれば、RCEによる審査再開の要否を審査官に判断させることもできます。
 特許証発行後は、IDSの義務はありません。しかしながら、特許証発行までに提出すべき情報があった場合、補充審査を利用して、提出すべきです。

 このように、提出すべき情報を速やかに提出しなかった場合、本来不要であった費用が必要となってしまいます。

 この点に関し、IPアドバイザリーでは、以下のようなサービスを行います。
・中国拒絶理由通知の日英同時翻訳
 米国出願に加え、世界2位のGDPを誇る中国への出願が増えています。そのため、米国出願した案件を中国にも出願するケースが増えています。
 先に述べたように、米国IDSは、対応外国出願で知り得た情報をできるだけ速やかに提出する必要があります。

 米国出願と伏せて中国にも出願するというニーズに応えるべく、IPアドバイザリーでは英語だけでなく中国語の特許翻訳にも対応しています。よって、IPアドバイザリーでは、中国で発送された中国語の拒絶理由通知(審査意見通知書)を、日本語及び英語に同時翻訳をすることができます。複数か国に出願したい場合、1社のみで完結させることが最もリスクが低く、成功確率は高いです。弊社ではその問題解決を行えます。

 これにより、IPアドバイザリーは、クライアント様に、
・拒絶理由対応検討のための拒絶理由通知の日本語訳、及び
・IDSとして中国の拒絶理由通知を提出する場合には、IDS用の英語訳
を、速やかに、高品質で提供することができます。

翻訳しやすい明細書作成のすすめ

 組成物は、成分Aを20重量%以上と成分Bを30重量%以上とを含む。好ましくは、40重量%以上である。

 この文では、好ましい範囲「40重量%以上」が成分Aなのか成分Bなのかが不明です。この文は極端な例ですが、日本語では、主語のない文が珍しくありません。

 そのため、特許翻訳の際、主語が何か不明な文に遭遇することもあります。そういった場合、前後関係から主語を推定しますが、どうしても不明な場合には、クライアント様に伺って、主語を確認します。

 後者の場合、基礎出願からは一義的に主語がわからない、ということになる場合もあります。

 一方、優先権翻訳文を提出する場合、基礎出願の内容そのままの翻訳文となるため、上記例文の翻訳文には、好ましい範囲「40重量%以上」の主語を記載することができません。

 そのため、米国出願のために限ったことではありませんが、日本語明細書作成の際も、できる限り主語を明確にし、翻訳しやすい明細書を作成することをお薦めします。 

まとめ

いざ米国に特許出願しようとすると気を付けなければならない制度上のポイントがいくつかあり、それらを知らないと特許審査に不利になってしまいます。IPアドバイザリーでは、こういった米国特許制度を配慮したうえ翻訳を行うので拒絶リスクを最大限に防ぐことができます。米国への特許出願は安心してお任せください。

株式会社IPアドバイザリー
石川県白山市で特許分析サービスを提供しています

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