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知財における包袋とは?|特許出願・審査経過を知る方法としての包袋

 「包袋」と聞くと、どのような物を想像しますか?「ほうたい」と読みますが、怪我した時に巻く「包帯」とは異なりますし、変換ミスでもありません。「包袋」は読んで字のごとく、包む袋です。この包袋は知財用語でもあり、知財業界では、特許や商標の出願経過を意味しています。

 この記事では、知財業界における「包袋」について、紹介します。 

目次

知財業界における「包袋」とは?

 知財業界における「包袋」とは、特許出願、商標出願等の出願経過を保存したものをいいます。出願経過とは、出願以後の特許庁と出願人とのやりとりです。具体的には、明細書等の出願書類、拒絶理由通知、それに対して出願人が提出した意見書及び補正書が含まれます。現在は、電子情報として出願経過が保存されていますが、昔は袋の中に保存していました。その名残で今でも「包袋」と呼ばれています。

 ちなみに、「包袋」は、英語で「File Wrapper」といい、フランス語では「dossier」といいます。「パテントファミリー(特許出願の束)の調べ方」の記事で紹介した「ワン・ポータル・ドシエ」の「ドシエ」は「包袋」という意味です。各国の特許庁は、公開公報、特許掲載公報、商標掲載公報などによって、その内容が公開された出願について、包袋に格納されている情報(ドシエ情報)も公開しており、誰でも閲覧することができます。ドシエ情報は各国で引用された先行技術文献の情報を各国特許庁で共有できるなど、様々な有効利用が可能となります。

「包袋」に格納されている情報の閲覧方法

 包袋に格納されているドシエ情報は、各国特許庁だけでなく出願人にとっても有効利用が可能です。例えば、第1庁で引用された引用文献の内容や審査官の判断を、第2庁の出願に利用することができます。

 また基本的に、代理人は庁からのアクションを受領したら、迅速に出願人に連絡をします。しかしながら、どうしても連絡到着までのタイムラグが生じます。包袋に格納されているドシエ情報のうち公開されている情報は、代理人を介さずとも何人も閲覧をすることができます。そのため、代理人からの連絡を待たずに出願人自ら庁からのアクションを確認することができます(ただし、継続的にドシエ情報をウォッチをする必要があります)。

 この項目では、包袋に格納されているドシエ情報を閲覧する手順を紹介します。

(1) 日本
 日本では特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp)からドシエ情報を閲覧することができます。

 具体的な手段は以下の通りです。
(a) 特許情報プラットフォームのページにおいて、「特許・実用新案番号紹介/OPD」を選択します。 

(b) ドシエ情報を閲覧したい出願のID番号(出願番号など)を入力し、「紹介」を実行します。それにより現れたページにおいて「経過情報」をクリックします。

(c) それにより例えば以下のような経過情報が表示されます。

 閲覧したい書類をクリックすると各書類を閲覧することができます。出願情報や登録情報(登録されていた場合)も閲覧することができます。

 なお、この方法では以下の情報を閲覧することはできません。これらの情報は、出願人及びその代理人又は利害関係人を除き、閲覧及び交付の請求をすることはできません。
A. 特許権の設定の登録又は出願公開(出願公告)されていない出願
B. 延長の理由を記載した資料に記載されている事項のうち、延長登録出願人から営業秘密が記載されている旨の申出があった事項で、特許庁長官が認めた事項
C. 無効審判等の書類であって、当事者又は参加人の保有する営業秘密(不正競争防止法第2条第6項に規定するもの)が記載された旨の申し出があったもの
D. 個人の名誉又は生活の平穏を害するおそれのあるもの
E. 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのあるもの

(2) 米国
 米国のドシエ情報は、Public Pair(Public Patent Application Information Retrieval; https://portal.uspto.gov/pair/PublicPair)を用いて閲覧することができます。 

 この画面で、調べたい出願のID番号を入力し、「search」をクリックします。それにより表れたページに以下のタブが表れます。

 このタブのうち、「Image File Wrapper」をクリックします。それにより例えば以下の通り、USPTOが管理している当該出願のドシエ情報の一覧が表示されます。

 閲覧したい情報のリンクをクリックすると、当該書類を表示することができます。また閲覧したい情報の左端のチェックボックスをクリックし、最上段の青色の「PDF」ボタンをクリックすると、一括でPDFファイルとしてダウンロードすることができます。

(3) 欧州
 欧州のドシエ情報は、Espacenet(https://worldwide.espacenet.com/?locale=en_EP)から入手することができます。 

 上記画面で、調べたい出願のID番号を入力し、「Search」ボタンをクリックします。

 表示されたページの「EP Resister」をクリックします。

 表示されたページには、当該出願の情報及び審査経過等が示されています。このページの右欄の「All documents」をクリックすると、以下のページが表示されます。

 米国のImage File Wrapperと同様に、閲覧したい情報のリンクをクリックすると、当該書類を表示することができます。また、閲覧したい情報の右端のチェックボックスをクリックし、「↓Selected documents」をクリックすると、一括でPDFファイルとしてダウンロードすることができます。

(4)中国及び韓国
 中国及び韓国のドシエ情報については、日本特許庁の上記特許情報プラットフォームから入手することができます。 

 ただし、ここで得られるのは原文又は機械英文訳です。より正確な情報を得るには、日本語、中国語又は韓国語、及び知財に精通した翻訳者による翻訳が必要です。

「包袋」について留意すべき点

 以上説明したように、包袋に格納されているドシエ情報は簡便に閲覧が可能です。便利である反面、出願人自身が提出した書面についても、公開されている情報は、何人も簡便に閲覧が可能であるという側面があります。例えば、明細書に企業秘密が判明してしまう情報を記載していると、それは公に知られることとなります。以前、「【必見】記載要件の拒絶理由通知を受けない出願とは?」で紹介したように、公開してもいい情報であるか、十分に判断した上で、明細書に記載する必要があります。

 また、「禁反言」という法理があります。これは、精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典では、この禁反言について

自分の言動が一たび表明された以上、後になってこれに反する行動や主張をすることを許さないとするもの。エストッペル。

と記載されています。

 知財でもこの法理があり、出願人が自らの自由意志で主張した内容に反する行動や主張は許されません。例えば、本願の独立項がAであり、拒絶理由通知に対する意見書において、出願人が本願発明Aは発明Bを含まないと主張し、本願が特許査定となったとします。いざ権利主張の際、権利者(出願人)が、「Bは特許発明Aに包含されるから権利侵害にあたる」と主張することは、先の意見書の主張に反する主張であるので、許されないのです。

 このように、包袋に格納された出願人による意見書の内容も、権利活用の際に非常に重要になってきます。 

まとめ

 包袋に格納されたドシエ情報は、出願人が有効に利用できる反面、出願人が庁に提出した書面の内容が何人も容易に閲覧が可能であるという側面があります。その事実を踏まえ、庁への提出書面を作成すべきであると考えます。

 なお、IPアドバイザリーでは、日本語、中国語及び特許に精通していますので、中国のドシエ情報を原文である中国語を日本語に精度よく翻訳するサービスを提供しています。ご利用頂けると幸いです。

株式会社IPアドバイザリー
石川県白山市で特許分析サービスを提供しています

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